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Contents Vol.9

800mフリーリレーの肝は、「4人の熱が揃うこと」。

2016年リオデジャネイロオリンピック、男子4×200mフリーリレーで銅メダルを獲得した松田丈志。その翌年、2017年に初めて日本代表入りを果たし、現在も日本の自由形を牽引する松元克央。代表ではちょうど入れ替わるような形となり、同じチームで泳ぐことのなかった二人が、800mフリーリレー、通称「8継」について語り合った。
個人競技のイメージが強い水泳において、リレーだけに存在する高揚感とは何なのか。4人の泳順はどう決まるのか。そして、リオで日本がメダルを掴むまで、チームの中では何が起きていたのか。
そして、いま再び、男子200m自由形の選手層が厚くなり、8継への期待が高まりつつある。二つの世代の言葉から、リレーという競技の奥深さと、ロサンゼルスへ向かう日本チームの可能性が見えてきた。

リレーになると、個人では出ない高揚感がある

ーお二人は代表で一緒になったことがないんですよね。

松田:ちょうど入れ替わりだったんですよね。僕はリオが最後で、克央が代表に入ってきたのがその翌年。直接一緒に泳いだことはないです。

ー松田さんは、松元さんの存在は当時から知っていたんですか?

松田:知ってました。やっぱり体が大きいし、「いい選手が出てきたな」と思ってましたよ。当時の200m自由形の日本人選手では、僕ぐらいでも大きい方だったんです。だから、克央みたいに体格のいい選手が出てくると、それだけで目につく。体の大きさって、一つの大きなポテンシャルですから。
松元:めちゃくちゃ嬉しいです(笑)。

ー松田さんは以前、個人よりリレーの方が速く泳げることがあるとお話しされていました。それはなぜなんでしょう?

松田:まず技術的には「引き継ぎ」があるので、個人種目のスタートより0.3秒から、選手によっては0.5、0.6秒ぐらい速くなることがあります。ただ、それだけじゃない。リレーになるとパフォーマンスが上がる選手と、そうでもない選手がいるんですよ。僕はリレーが好きだったし、個人では出せない高揚感があったので、どちらかというとリレーが得意なタイプでした。

ー仲間がいることで気持ちが上がる?

松田:そうですね。個人だと緊張感の割合が大きいんですけど、リレーは緊張感と高揚感のバランスがいい。
松元:それは僕もあります。個人だったら一人で召集所に入って、一人で入場する。でもリレーだったら4人いて、少し話もできる。それだけでリラックスできます。最後にきつくなった時も、「絶対に迷惑をかけないぞ」という気持ちでもうひと踏ん張りできます。

ー逆に、リレーが増えることでパフォーマンスが落ちる選手もいる?

松元:いると思います。国際大会は1週間ぐらい続くので、個人種目にプラスしてリレーが入ると、レース数が一気に増える。そこで体力と気力が持つかどうかは、普段どれだけ練習を積んでいるかも大きいです。個人種目だけに合わせた練習量だと、リレーが入った時に疲れが出てしまう選手もいると思います。
松田:海外の選手を見ていても、明らかに「この人、リレーにあんまり興味ないな」と感じることがあるんですよ(笑)。リオのオーストラリアがまさにそうでした。メンバーの持っている力を考えればすごく強いチームだったんですけど、個人で結果を出して満足している選手と、リレーでどうしてもメダルが欲しい選手の間に温度差があった。

ー泳ぐ前からわかるんですか?

松田:雰囲気でわかります。
松元:やる気がない人は特にわかりますよね(笑)。
松田:各国が4人でワーッと盛り上がっているなかで、一人だけ違う空気だったりする。そういうものも、リレーでは意外と結果に出るんです。

リオの銅メダルは、4人のモチベーションを揃えるところから始まった

ーそう考えると、リオで日本がメダルを獲れた理由も、単純に4人(萩野公介さん、江原騎士さん、小堀勇気さん、松田さん)のタイムを足しただけでは説明できない?

松田:できないですね。僕は、4人のモチベーションを揃えられたことがすごく大きかったと思っています。僕自身は32歳で、おそらく最後になるオリンピックだった。過去のオリンピックでメダルを逃した悔しさも知っていたし、スポンサーをはじめ、いろんな人に支えてもらって競技を続けていたので、絶対に結果を出したかった。
それに、僕はもともと自由形の選手でもあるので、8継にはずっと思い入れがあったんです。日本はそれまで、世界大会の8継で4位、5位というレースが何度もあった。僕自身もアンカーを泳いで、メダル圏内で回ってきたのに最後に抜かれたり、本当に僅差で届かなかったりした。だから、「いつか8継でメダルを獲りたい」という思いがずっとありました。リオでは個人種目の代表には入れなかったけど、逆に「これは8継でメダルを獲るチャンスだ」と完全に切り替えられたんです。

ーほかの3人はどうだったんでしょう。

松田:代表が決まってすぐ、まず萩野に聞いたんです。「8継どう思ってる?」って。そしたら「僕、絶対リレーでメダル獲りたいです」って言ってくれた。小堀も、ロンドンの時に僕たちがメダルを獲って注目されているのを見て、「めちゃくちゃ悔しかった。僕も絶対メダルを獲りたい」と言っていた。「よし、二人ともやる気あるぞ」と。
ただ、江原は初めてのオリンピックだったから、代表に決まったこと自体が嬉しくて、ちょっと浮き足立っていたんですよ。取材も増えるし、いろんな人から連絡もくる。だから萩野、小堀とも「江原が本気にならないと絶対にメダルは獲れないよね」という話をして。もちろん急に「本気になれ」と言ったって変わらないので、合宿をしたり、一緒にご飯を食べたりするなかで、オリンピックで結果が出るか出ないかによって何が変わるのか、それぞれの経験を少しずつ話していったんです。

ーそこまでチーム内のコミュニケーションが必要なんですね。

松田:絶対に必要だと思います。だから、今度はそれを克央がやらなきゃいけないことなんじゃないかなと思ってます。
松元:僕もそう思っています。別に年長者だから、ということではないと思うんですけど、僕はこうやって丈志さんともコミュニケーションが取れる立場にいて、リオで実際にメダルを獲ったチームがどう作られていったのかも聞くことができる。もちろん、当時とまったく同じことをやればいいわけじゃないです。ただ、今は村佐(達也)がすごく8継に対して強い思いを持っていることもわかっているので、僕と村佐が中心になって、残りのメンバーのモチベーションを上げていくことはやっていきたいです。僕一人だと不器用なので(笑)、村佐のポジティブな部分とうまく組み合わせながらやれたらいいなと思っています。

泳順には、選手の性格まで表れる

ー4人の泳ぐ順番には、「こういうタイプはここ」という黄金率みたいなものはあるんですか?

松元:僕は、後半100mに強い人がアンカーに向いていると思います。僕と丈志さんって、同じ200m自由形でもタイプが結構違うんですよ。僕は100m寄りのスピードタイプで、丈志さんは持久力が強くて後半に上げていくタイプ。僕の場合、100mをターンした時に前に選手がいると、結構きついんです。「まだ前にいるの?」って思っちゃう(笑)。後半が得意なタイプじゃないので、そこから精神的にしんどくなる。
だから僕みたいなタイプは、前の泳順で泳いだ方がいい場合もある。一方で、100mをターンして「ここからだぞ」と燃える選手なら、周りに誰がいても左右されにくいので、後ろの泳順でも強いと思います。
松田:あと、プレッシャーが大きいのは1泳とアンカーだと思います。1泳は個人種目と同じスタートなので、そのままタイムが出る。各国もエースを1泳かアンカーに置くことが多い。それに、スタートが得意なのか、引き継ぎが得意なのかもあります。僕は普通のスタートはそんなに得意じゃなかったけど、引き継ぎは得意だった。だから1泳よりも、引き継ぎが使える泳順の方が向いていたと思います。

ー泳順は最終的に誰が決めるんですか?

松元:リレー担当のコーチがいて話し合います。ただ、僕の経験では選手の意見もかなり聞いてもらえます。
松田:リオはほぼ固定でしたね。萩野が1泳、アンカーが僕。2、3泳をどうするかというところで、最終的に江原、小堀という順番になった。江原はどちらかというとスピードタイプだったので、今の克央の話ともつながります。

ー泳順を見るだけでも、その選手のタイプや性格が見えてくる。

松田:性格もありますね。
松元:1泳なんて、相当メンタルが強くないと難しいと思います。
松田:リオの萩野はすごかったですよ。初日に400m個人メドレーで金メダルを獲っているのに、リレーでもほぼベストに近い泳ぎをしている。個人で結果を出して満足してしまう可能性だってあったわけですから。

同じ200m自由形でも、二人の武器は真逆

ー松田さんの時代と松元さんの今では、200m自由形の練習方法も変わっているんでしょうか?

松田:それは、むしろ今どういう練習をしているのかを聞いてみたいですね。
松元:僕と丈志さんでは、そもそもタイプが違うので、かなり違うと思います。僕はスプリンター寄りで、丈志さんは中長距離寄りですよね。かなり泳ぐ量も多かったんじゃないですか?
松田:多かったですね。僕はスピードがない分、持久力で勝負するしかなかったので、とにかくよく練習しました。量だけ比べても、かなり泳いでいたと思います。
松元:僕は対乳酸系のトレーニングが多いです。たとえば50mを6本、一本一本ほぼマックスで泳ぐ。休憩は長めなんですけど、5本目、6本目になると当然、1本目と同じようには体が動かなくなる。それでも良いフォームを維持しながら、がむしゃらに動かし続ける。本当に「もう体が動きません」というところまで追い込みます。丈志さんと比べたら、トータルの練習量は少ないかも。その代わり、一気に出力を上げて使い切るような練習が多いです。

ー松元さんはレースでも、前半100mが速いですよね。最初からほぼ全力なんですか?

松元:多少のペース配分はもちろんあります。でも僕は「100mをターンして、ここから上げる」という泳ぎ方があまりわからないんですよ。スタートから前に出ることができるので、そこからどこまで耐えられるか、という感覚です。ラスト50mが極端に弱いわけではないですけど、世界と比べたらそこはまだ課題だと思っています。
松田:僕からしたら、その持って生まれたスピードが羨ましいですけどね(笑)。ただ、スピードがある選手には、その出力をどこまで保てるかという悩みがある。逆に僕みたいにスピードがない選手は、たくさん練習できて体力もあるけど、最初のスピードがなかなか上がらない。だから後半のスタミナや持久力で勝負していくしかない。

ー松田さんは、後半を上げていける感覚がある?

松田:あります。僕は後半の方が得意でした。だから課題はずっと、前半のスピードをどう上げるか。そのために筋トレを増やして筋肉量をつけたり、パワーを上げたりしていました。
松元:本当に逆ですね。
松田:同じ時代に200m自由形を泳いでたら面白かったと思うよ。克央が前半ずっとリードして、最後に僕が「うわーっ」って追いついてくる(笑)。

ー泳いでいる最中、横の選手は見ますか?

松田:僕は見ますね。国内の選手なら特徴もわかっているから、100mで体半分ぐらい負けていても、「これなら全然大丈夫」と思って泳げた。
松元:僕は前にいてほしくないです(笑)。

ーそこも真逆ですね(笑)。

いま、リオの前と似た熱が生まれ始めている

ーリオでは松田さんがチームをまとめる役割も担っていたわけですが、松元さん自身はそういうリーダーになりたいですか?

松元:なりたいです、もちろん。ただ、僕はコミュニケーションがそんなに得意じゃないんですよ。丈志さんほど面倒見も良くない(笑)。たとえば、明らかに浮ついている後輩がいたとしても、「それじゃダメだろう」とは思うけど、無理やり言葉で変えようとはあまり思わないんです。本人が一度悔しい経験をして、「これじゃダメなんだ」と自分で気づくことも大事だと思っているので。もちろん、言えばわかってくれると思う人には言いますし、本気で向き合います。でも自分にもやるべきことがあるので、誰にでも同じように働きかけることはできないですね。
松田:基本的にはそれでいいと思いますよ。僕も誰にでも言っていたわけではないです。リオはその意味でも、すごくいいメンバーが揃っていた。江原も根は素直だから、言えばちゃんと聞いてくれる選手だった。いくら言っても響かない選手だったら、あそこまでエネルギーは使えなかったと思います。

ーリオの時は、練習以外でも4人で一緒に過ごしていたんですか?

松田:萩野以外の3人は、選考会から本番までほぼずっと一緒にいました。選考会が終わって最初の合宿の時に「一回みんなで話そう」と提案して、それぞれの考えや今後のスケジュールを確認したんです。メダルの可能性を上げるなら、この3人は同じコーチのもとで本番まで一緒に練習した方がいいんじゃないか、と僕は考えていた。
僕自身が力を出すには久世(由美子)コーチとの練習が合っていたので、そこに小堀と江原にもアジャストしてもらいながら、二人の様子を見て久世コーチとも話して、少しずつ練習を調整してもらった。不満を溜めたままにするのが一番よくないので、「最近どうですか」「こんなこと言ってましたよ」と、その都度コミュニケーションを取っていましたね。

ー完全にチームの回し役ですね。

松田:役割としては、そうだったと思います。そして今、僕はちょっとリオの前と似た空気が出てきていると思っているんですよ。

ーどういうところですか?

松田:200m自由形の選手層が厚くなってきて、種目全体が熱くなってきている。中心に克央と村佐がいる。僕が200m自由形の日本記録を持っていて、それを萩野が更新していった時の関係にも少し似ているんです。今は村佐が1分44秒54の日本記録を持っていて、克央もその前の日本記録保持者だった。この二人が本気で「8継でメダルを獲る」と盛り上がっていけば、「俺もそこに入りたい」「この二人と一緒にやりたい」という選手が必ず出てくると思うんです。その熱が高くなればなるほど、同じ熱量を持った選手が残っていく。そうしてロスの年に4人が揃った時、すごくいいチームになる可能性があると思っています。

ーまず中心となる二人がいることが重要なんですね。

松田:めちゃくちゃ大事です。この対談だってそうじゃないですか。8継に対する熱がなかったら、きっとこの企画も生まれていない。この前、日本水泳連盟のアスリート委員会で8継についてインスタライブをやったのも、今ちょうど盛り上がってきているからです。「なんか今、8継が熱くなってるぞ」という空気を自分たちから発信していけば、その熱はだんだん伝播していくと思うんです。
松元:僕も村佐とはよく8継の話をします。日本選手権の決勝を見ながら、「この選手が来たら面白いね」とか。今、本当に層が厚くなってきているし、表彰台に上がるために必要なタイムも上がっている。僕らが中心にいるという自覚はあります。でも、若い選手には「8継のメンバーに入りたい」だけじゃなくて、「僕らを倒して個人で代表に入りたい」と思って来てほしいんですよ。
たとえば沼田くんのように、個人種目で代表を狙いたいと思っている若い選手が出てきている。その気持ちはすごく大事です。個人で代表を狙って、届かなくて悔しい。そのうえで8継のメンバーに入る方が、そこで満足しない。ゴールがもっと先にあるので、さらに強くなれると思うんです。僕は僕で、若い選手たちに負けないように耐え続けないといけないですけど(笑)。

32歳のロスへ。毎年を「全盛期」にする

ー松元さんは現在29歳。ロサンゼルスオリンピックを迎える頃の年齢が、松田さんがリオに出場した時とほぼ重なります。

松田:本当だ。僕が最後のオリンピックに出た年回りと一緒ですね。

ーその経験から、今の松元さんに伝えられることはありますか?

松田:もうこの年齢まで来たら、練習なんて散々やってきてるじゃないですか。ここから「練習量を倍にします」なんてできない。僕がリオの前にやったのは、栄養戦略を徹底することでした。そこにまだ伸びしろがあるんじゃないかと思ったんです。体はかなり変わりました。ただ、栄養にこだわればそのままタイムが伸びるわけでもないので、自分に必要なことを一つひとつ丁寧にやっていくしかない。
松元:僕自身は今のところ、大きく何かを変えている感覚はないです。ただ、年齢を言い訳にはしたくないと思っています。鈴木聡美さんのように、30代になってもベストを更新している選手が日本にいる。それを見ていると、「自分にも可能性はある」と思えるんですよね。今はもう一度、200m自由形で日本新記録を出したいという気持ちがはっきり出てきています。出せるか出せないかは別として、日本記録をターゲットにしている自分がいる。年齢を気にせず、若い頃みたいに「とにかく日本新を出したい」と思えているんです。
松田:僕自身のリオを振り返ると、当時ちょっと落ちていたのが「パワー」だったんです。瞬間的に大きな力を出す能力ですね。持久力は泳ぎ込むことで比較的つけやすいけど、筋肉の大きさなどにも関係するパワーは、上げるのに時間がかかる。僕はもともとスピードがないから、長い時間をかけてパワーを磨いてきたんですが、リオの年には過去のデータと比べて少し落ちていた。頑張って戻そうとしたけど、間に合わなかった。あと1年、2年かけられていたら違ったかもしれないと思うんです。
若い頃は、持久系のトレーニングも筋力トレーニングも、半年ぐらいの短いスパンに全部詰め込める。でも年齢を重ねると、それが難しくなる。だから体作りは前年にやっておいて、次の年は維持する、といった長い設計が必要になる。ロスだけを見るんじゃなくて、「今年はこれ、来年はこれ」と分散して考えてもいいと思います。
松元:それはすごく参考になります。ただ僕自身は、毎年全力でやっていきたいとも思っています。もちろんロスはターゲットです。でもロスに向けて少しずつ上げるというより、毎年「今年が自分の全盛期だ」というつもりでやりたい。たとえばロスの前年に8継でメダルを獲れたら、それだけで一気に盛り上がるじゃないですか。そのためにも、毎年一番きついトレーニングをして、毎年目標を叶えにいく。僕にはその方が合っている気がします。
松田:それもすごく大事ですよ。自分たちから「俺たちは本気でメダルを獲りにいってる」と意思表示して、一緒に戦ってくれる人を増やしていく。

選考会そのものが、満席になるくらい熱くなればいい

ー選手たちの熱だけでなく、水泳を見る側の熱量も変わってきていますか?

松元:少しずつお客さんが増えている感覚があります。ただ、毎回満席かと言われたら、まだそこまではいっていない。まだまだポテンシャルがあると思います。スポーツって、誰が勝つかわからないから面白いと思うんです。それが高いレベルで起これば起こるほど、面白いし、かっこいい。今は若い選手がどんどん出てきていて、本当に誰が勝つかわからないレースになりつつある。確実にいい方向には向かっていると思います。ただ、まだその途中ですね。
松田:ロスに向けた200m自由形の選考レースなんて、絶対面白いですよ。決勝に8人いて、そこから4人が8継の中心メンバーになる。8人のうち4人ですよ。

ースタンドのあちこちから悲鳴が上がりそうですね(笑)。

松田:そう(笑)。そこが満席になるくらいまで、事前に熱を高めておけたらいいと思うんです。日本全国の水泳ファンに、「8継で本気でメダルを狙っている選手たちがいる」「今、こんなに面白い争いが起きている」ということがちゃんと伝わるのが大事だと思います。

ー試合だけではなく、こういう対談やSNS、あるいはポッドキャストのようなものも含めて、選手と水泳に触れる接点を増やすことが重要なのかもしれません。

水泳には、まだ先がある

ー最後にちょっと無茶振りですが、歴代の日本人選手から4人選んで、最強の800mフリーリレーを組むとしたら?

松田:これ、具体的に考えると僕はギリギリメンバーに入るぐらいだと思う(笑)。
松元:今は村佐が1分44秒54で、僕も1分44秒台。昔だと内田翔さんも速かったですよね。
松田:そう考えると、本当に速くなったよね。

ー単純にベストタイム上位4人を並べるだけじゃなく、今日のお話を聞いていると、性格や泳順の組み合わせまで考えたくなります。

松田:そうなんですよ。

ー松田さん自身が入るなら、何泳ですか?

松田:僕は2か3かな。
松元:僕はメンバー次第ならアンカーでも大丈夫です。

ーそれにしても、水泳の記録はどんどん速くなっていますよね。

松田:まだ先がありそうですよね。トレーニング理論も進化しているし、そもそもポテンシャルの高いアスリートが水泳に入ってきているということもあると思います。

ー松田さんが今現役だったら、「これをやってみたかった」というトレーニングはありますか?

松田:自転車ですね。最近は水泳選手でもバイクでかなり追い込む選手が増えています。僕は現役の時にほとんどやっていなかったんですけど、今見ると、自分には合っていただろうなと思う。泳いでいる時よりもはるかに速い回転数で脚を動かすので、神経系へのアプローチになるんです。僕が苦手だったスピードやキレにつながるトレーニングだと思う。

ー水の中だけでは作りづらい速い動きを、陸上で体に覚えさせる。

松田:そうです。泳ぐことがベースなのは変わらないけど、「これは水中より陸上でやった方が効率がいいよね」という代替案がどんどん出てきている。そこはトレーニング理論が進化しているところだと思います。

ーそう考えると、水泳ではまだ人間の限界に到達していないのかもしれませんね。

松田:まだもう少し先がありそうですよね。
松元:世界の進化が本当に速いので、僕もどこまでいくのかわからないです。

プロフィール

左:松元克央(まつもと・かつひろ)
1997年生まれ。福島県出身の競泳選手。主種目は自由形・バタフライ。2019年世界水泳で男子200m自由形銀メダルを獲得し、日本男子として同種目初の快挙を達成。2020年東京五輪、2024年パリオリンピック日本代表。日本記録保持者として世界大会でも活躍を続ける日本競泳界のエース。愛称は「カツオ」。

右:松田丈志(まつだ・たけし)
1984年、宮崎県生まれ。元競泳日本代表。オリンピック4大会に出場し、計4個のメダルを獲得。現役中からスポーツ科学を学び、引退後には体育学の博士号を取得。現在はスポーツジャーナリストとして、「泳ぐ日はいい日になる。」を合言葉に、競泳に限らない水泳の魅力を発信している。